作/エーリヒ・マリア・レマルク 潤色/ピーター・ストーン 訳・演出/勝田安彦 出演/斉藤深雪、小山力也、島英臣、中吉卓郎、中寛三、安藤みどり、齋藤隆介、芦田崇、藤田一真 5月29日(月)7時 30日(火)6時30分 31日(水)1時30分 ウインクあいち
1945 年4 月30日ドイツ第三帝国崩壊前夜
ベルリンのとあるアパートの一室で息を潜める一人の女、そこへ強制収容所から逃げ込んできた政治犯、その彼を追うゲシュタポの大尉。この三人を軸に、最後の最後まで息をもつかせぬ強烈なサスペンス溢れる緊迫の人間ドラマが展開される。極限状態の状況下のスリリングな120分。
「西部戦線異状無し」「凱旋門」など生涯一貫して反戦を訴え続けたレマルクの唯一の戯曲。
陥落寸前のベルリンを舞台にしたこの芝居は個としての人間の自由を否定するあらゆる体制と愚劣な戦争への異議申し立てという主題を、極限状況の中で芽生える悲痛なラヴ・ストーリーにからめて提示した、メッセージ性のみならず娯楽性にも富んだいわば硬質なメロドラマです。
息を潜めるようにアパートの1室に住む曰くありげな女・アンナを斉藤深雪、その部屋に逃げ込んでくる政治犯ローデを声優としても活躍している小山力也、そしてローデを追うゲシュタポの大尉を島英臣が演じます。また、地区監視員のクルーナーを中吉卓郎、ユダヤ人の科学者カッツを中寛三のベテラン陣が脇をかためます。
尚、潤色のピーター・ストーはシナリオライターとして映画「シャレード」のシナリオにも参加、他の作品でアカデミー脚本賞も受賞していますが、舞台のミュージカルの台本も数多く手がけており「タイタニック」「ミズ−今年最高の女性−」「1776年」で3回もトニー賞を受賞しています。
2時間の上演時間の間の緊張感が途切れることがない作品。ドラマチックなサスペンス劇としての、エンターテインメントな芝居の面白さに加え、ナチスドイツの末期に生き抜いていく人々の姿が描かれ、きな臭くなりつるある今の時代の中で、テーマがより身近なものとして受け止められます。
小山力也分する、政治犯ローデの台詞の中に「黙っていたのは罪だった、まだ大丈夫だと思っていた」という言葉があえいます。そして、ソ連軍将校の「自由なドイツ人が選んだ指導者がヒトラーだった」という言葉とあわせ、今の時代の流れに対しての警鐘がみえてきます。